スピリチュアルケア師 倫理綱領

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スピリチュアルケア師 倫理綱領

  • 〈前文〉

    一般社団法人日本スピリチュアルケア学会(以下、「本法人」という。)により、スピリチュアルケアに関する「指導」、「専門」、「臨床」資格のいずれかを認定されたスピリチュアルケア師(以下、「スピリチュアルケア師」という)は、ケアに必要とされるスピリチュアリティと知識、技能を有し、ケア対象者の基本的人権を守り、人々に適切なスピリチュアルケアを提供する専門職である。

    本法人は、一般社団法人日本スピリチュアルケア学会倫理規程第4条にもとづき、一般社団法人日本スピリチュアルケア学会スピリチュアルケア師倫理綱領を定める。有資格者及び資格認定を目指す者は、本綱領の理念を理解し遵守する義務を負うと共に,よりよいスピリチュアルケアの実践に不断の努力を行うものとする。

  • 〈ケア対象者を傷つけない〉

    1 スピリチュアルケア師は、ケア対象者を傷つけてはならない。

  • 〈ケア対象者の尊厳を守る〉

    2 スピリチュアルケア師は、ケア対象者を尊厳ある存在として接する。

  • 〈人種、性、年齢、国籍、社会的地位等によって差別しない〉

    3−1 スピリチュアルケア師は、ケア対象者を人種、性別、年齢、国籍、社会的地位、文化的背景、思想信条、宗教・信仰等によって差別しない。

    3−2 スピリチュアルケア師は、ケア対象者を自らの先入観や偏見に基づいて見ることがないよう努める。

  • 〈ケア対象者・関係者との適切な関係〉

    4−1 スピリチュアルケア師は、ケア対象者との関係において、「ケア対象者―ケア専門家」以外の関係を持たない。

    4−2 スピリチュアルケア師は、ケア対象者およびその関係者に対し、支配的な立場とならず、また、支配的な力を行使しない。

    4−3 スピリチュアルケア師は、ケア対象者およびその関係者との関係において、転移や依存等の関係が生じることに留意し、私的な関係を結ばない。

    4−4 スピリチュアルケア師は、ケア対象者へのケアにあたり、公共空間において開かれたケアを心がける。密室での面接や、身体接触、過度の自己開示、個人的通信、会食、金品の贈答等を慎み、ケア対象者または第三者の誤解を招くことがないよう努める。

    4−5 スピリチュアルケア師は、ケア対象者のケアを行う専門職であり、単なる研究対象としてケア対象者を利用しない。研究倫理については別に定める。

  • 〈自らの信念,信仰,価値観,対人傾向の相対化〉

    5−1 スピリチュアルケア師は、ケア対象者の宗教・信仰,思想信条、価値観等を尊重する。そのためスピリチュアルケア師は、絶えず自らの内なる信念等を自覚するよう心がけ、ケアにおいて、自らの信念がケア対象者と同じではないことを知る必要がある。

    5−2 スピリチュアルケア師は、自分自身の心身の状態がケア対象者へ影響を与える虞れがあることを自覚し、自身の対人関係の傾向などを把握するよう努める。

  • 〈ケア対象者の自主性の尊重〉

    6 スピリチュアルケア師は、ケア対象者の自主性・自己決定権を尊重し、自らの個人的信念等に基づいてケア対象者にアドバイスや指導をすることのないよう心がける。

  • 〈ケア対象者に関する情報の守秘義務〉

    7−1 スピリチュアルケア師は、ケア対象者に関わる情報・相談内容の秘密を保持し、適切に管理する。自らの利益のために用いたり第三者に漏洩したりしない。

    7−2 ケア対象者の情報を第三者と共有することが、ケア対象者の利益となる場合は、ケア対象者の同意を得て共有することができる。

    7−3 スピリチュアルケア師は、自傷他害の虞れのある場合および法による定めがある場合は、守秘義務の例外となることがあることを、ケア対象者に予め伝え了解を得る。

    7−4 スピリチュアルケア師は、ケア対象者の秘密保持を守りつつ、ケアの場である所属機関への適切な報告と協働の維持構築につとめ、ケア対象者へのよりよいケアと福祉の向上に努めなければならない。

    7−5 スピリチュアルケア師の守秘義務は、その職を辞し、または、資格を喪失した後も課せられる。

    7−6 スピリチュアルケア師は、ケアの内容について客観的かつ正確に記録をしておく。ケア対象者から開示を求められた場合は、原則として応じるものとする。

  • 〈スピリチュアルケア師としての適切なふるまいと報告義務〉

    8−1 スピリチュアルケア師は、公的な性格を有する社会的役割を担っている。したがって、その社会的役割にふさわしく適切にふるまう責任を有し、スピリチュアルケア師の信用を損ない不名誉となるような行為をしない。

    8−2 スピリチュアルケア師は、その社会的役割の立場・地位を濫用・悪用しない。自らの思想信条、宗教・信仰、利益のためにケア対象者を利用しない。

    8−3 スピリチュアルケア師は、ケア対象者のみならず、その関係者、所属機関等関係する組織・個人,地域社会等と適切かつ良好な関係の構築・維持に努める。自身やケアに関する誇張・虚偽の情報を提供せず公正を期し、社会的信用を損なわない。各種メディアへの露出については,ケア対象者の人権を侵害しないよう配慮すると共に、スピリチュアルケアが誤解されないよう慎重な対応をとる。

    8−4 スピリチュアルケア師は、スピリチュアルケアを行うにあたり、可能な限り公共性・透明性を確保し、不審・疑念を抱かれることがないようにする。疑念を抱かれた場合、守秘義務を踏まえつつ適切な説明を行わなければならない。

    8−5 スピリチュアルケア師は、その社会的役割に対し、不適切なふるまいをした場合、そのケア対象者、関係者、所属機関、社会、本学会等に対し責任を負う。当事者は本学会倫理委員会に報告しなければならない。そのふるまいの事実を知った会員は、当事者に自覚を促すと共に、本学会倫理委員会に報告し、調査に協力する義務を負う。

    8−6 スピリチュアルケア師は、不適切なふるまいがあったと指摘された場合、本学会倫理委員会の調査に応じる義務を負い、また弁明の権利をもつ。

    8−7 スピリチュアルケア師は、不適切なふるまいが本学会理事会で認められた場合、教育・研修の機会、または別に定める懲戒処分を受ける。

  • 〈自己の限界の認識と向上義務〉

    9−1 スピリチュアルケア師は、自己のケアの専門的能力と限界をよく認識し、その範囲内でケアを提供する。

    9−2 スピリチュアルケア師は、スピリチュアルケアを、医療的(身体・精神)ケアや身体的ケア、宗教的ケアと混同してはならない。またケア対象者とその関係者などから誤解を招かないようにする。

    9−3 スピリチュアルケア師は、ケア対象者の利益と自らのケア力向上のため、絶えず自己研鑽に努める。

    9−4 スピリチュアルケア師は、有資格者・関係者と共に相互研鑽に努め、ケア対象者の利益のため互いに連携し支え合う。

  • 〈雑則〉

    10−1 本綱領の理念を実現するため、スピリチュアルケア専門職倫理細則を制定する。

    10−2 本綱領の改廃は、理事会の決議によるものとする。

  • 〈附則〉

    本綱領は、令和2年4月18日から施行
    令和2年9月6日、改定